血ガス異常の基本形4つ

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今まであまり2年目さんとデイパートナーならなかったのですが、最近よくなるようになったので、振り返り学習です。

 

血ガス異常の基本形4つ

いつもこの天秤の図を思い出してます。

①呼吸性アシドーシス

ガス交換や換気がうまくいかず、血液中からCO2が排泄されないことでCO2濃度が上昇し、血液pHが酸性に傾いている病態。基本はCO2濃度の上昇でPaCO2>40、血液pH<7.35を示します。代償性変化としては、急性・慢性によって腎臓の代償作用が異なりますが、一般的にHCO3->35になることはまれなので、その場合は代謝性アルカローシスの合併を疑います。

原因は、肺胞低換気の病態よることが多く、呼吸不全・COPD・肺炎などの呼吸器疾患、ギランバレー症候群などの胸郭呼吸筋による換気障害、麻薬や睡眠薬の過剰投与などの中枢神経系の異常などで起こる。

 

②呼吸性アルカローシス

呼吸苦で呼吸が早く、深くなることで、血液中からCO2が過剰に排泄されてCO2濃度が下降し、血液pHがアルカリ性に傾いている病態。基本はCO2濃度の低下でPaCO2<40、血液pH>7.45を示します。代償性変化としては、急性で腎臓の代償作用によってHCO3-が低下します。PaCO2が15以下になった場合は死亡率が高く、代償性アシドーシスの合併や重症例を考えます。

原因は、肺炎や喘息などによる軽い呼吸困難、疼痛や不安など精神的理由に起因する過換気症候群などがあります。

 

③代償性アシドーシス

体内で酸性される酸が増加したり、HCO3-が再吸収されずに体外に排出されることで血液中のHCO3-が減少し、血液pHが酸性に傾いている病態。基本はHCO3-の減少で、HCO3-<24、血液pH<7.35を示します。代償性変化としては、肺胞過換気によるPaCO2の低下が見られます。

原因は、慢性腎不全、糖尿病性ケトアシドーシス、乳酸性ケトアシドーシス、尿毒症、重度の下痢などがあります。

 

④代償性アルカローシス

H+やCL-の喪失、腎臓でのHCO3-排泄の低下などによって相対的にHCO3-が増加し、血液pHがアルカリ性に傾いている病態。基本は、HCO3-の増加でHCO3->24、血液pH>7.45を示します。代償性変化としては、肺胞低換気によるPaCO2の上昇が見られます。

原因は、激しい嘔吐や胃液の喪失、利尿剤の過剰投与などがあります。

 

 

<主な基準値>

pH 7.40±0.05

PaO2 80~100Torr

PaCO2 40±5Torr

HCO3- 24mEq/l

SaO2 96±2%

BE 0±2mEq/l

 

<データ値説明>

PaO2(動脈血酸素分圧)

Pはpressure(圧力)、aはartery(動脈)を表し、酸素化の評価に用いられる。酸素分圧とは、1気圧の中にどれだけ酸素量があるかを表しています。体内でのガス交換は、圧の高低差によって行われ、赤血球は酸素分圧が高いところで酸素を受け取り、低いところで酸素を放出します。つまり、酸素分圧は動脈血では高く、静脈血では低いわけです。PaO2の基準値は80~100Torr、生命維持に最低限必要な酸素分圧は60Torrで、これを下回れば呼吸不全と診断します。

 

SaO2(動脈血酸素飽和度)

Sはsaturation(飽和度)、aはartery(動脈)を意味し、動脈血の酸化ヘモグロビンの比率を表します。酸素化の指標としては最も信頼性のある値。基準値を下回る原因としては、呼吸器疾患でガス交換が十分にされていない、貧血などで酸素と結合できるヘモグロビンが少ない、心疾患などによる血液循環の障害などがあります。

 

PaCO2(動脈血二酸化炭素

動脈血中のCO2の量を表します。ガス交換と酸塩基平衡の指標として、血液ガスの中でも重要なデータと言えます。基準値は40±5Torr。呼吸不全などで呼吸状態に障害があると、CO2の排泄が阻害されて体内に蓄積し、値が上昇して高二酸化炭素血症をきたすことがあります。PaCO2の上昇は肺胞低換気を、低下は肺胞過換気を示します。呼吸が早く、深くなると過換気によってCO2は減少します。

 

PH(水素イオン)

水溶液中のH+濃度のことで、酸性あるいはアルカリ性の強さを示します。化学的には7.0が中性で、それ以上はアルカリ性、それ以下は酸性となります。ただし、細胞内で酸性される大量のCO2排泄のために、体内にはHCO3-をはじめとする塩基があるので、血液pHの基準値は7.4±0.05となっています。pHに異常がある場合は、HCO3-とPaCO2を調節している肺または腎機能や代謝に障害があることが考えられます。

 

HCO3-(重炭酸イオン)

体内でH+が産生されたとき、血液が産生に傾くのを抑えるためにH+を受け取る塩基の一つで、酸塩平衡の指標として用いられます。揮発性酸以外にも硫酸や硝酸、塩酸といった不揮発性酸の緩衝に作用するなど、緩衝作用に使われる緩衝系物質の中で最も需要な役割を果たしています。pHを規定する因子で、基準値は24mEq/l。HCO3-は腎臓で調節されており、減少する主な疾患・病態としては糖尿病や慢性腎不全などがあります。

 

BE(ベースエクセス/Base Excess)

BEとは、37.0℃、PaCO2が40Torrにある血液をpH7.40に戻すためには、それだけの量の酸や塩基が必要かを表している。この値がマイナスならば、酸が蓄積しているということで、つまりアシデミア(代謝性アシドーシス)になっていることが分かります。逆にプラスであれば、塩基が過剰な状態、アルカレミア(代謝性アルカローシス)になっていると考えられます。だたし、呼吸性と代謝性の混合障害を算定することはできません。あくまでも、“血液”の代謝性因子を見るための指標の一つと考えます。