COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版

COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版

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1.目的

現時点では、COVID-19の抗ウイルス薬による治療に関する知見は限られている。過去には重症急性呼吸器症候群SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)患者に対して既存の抗ウイルス薬が使用されている。これらの事実に基づいてCOVID-19の抗ウイルス薬に関する本邦における暫定的な指針を示すのが本指針の目的である。

 

2.使用にあたっての手続き

現在日本ではCOVID-19に適応を有する薬剤は存在しない。よって行う事のできる治療は、国内ですでに薬事承認されている薬剤を適応外使用することである。使用にあたっては、各施設の薬剤適応外使用に関する指針に則り、必要な手続きを行う事とする。

 

3.抗ウイルス薬の対象と開始のタイミング

現時点では、患者の臨床経過の中における抗ウイルス薬を開始すべき時期は患者が低酸素血症を発症し、酸素投与が必要であることを必要条件とする。そのうえで以下のように考える。

1)概ね50歳未満の患者では肺炎を発症しても自然経過の中で治癒する例が多いため、

必ずしも抗ウイルス薬を投与せずとも経過を観察してもよい。

2)概ね50歳以上の患者では重篤な呼吸不全を起こす可能性が高く、死亡率も高いため、低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった段階で抗ウイルス薬の投与を検討する。

3)糖尿病・心血管疾患・慢性肺疾患、喫煙による慢性閉塞性肺疾患、免疫抑制状態等のある患者においても、上記2に準じる。

4)年齢に関わらず、酸素投与と対症療法だけでは呼吸不全が悪化傾向にある例では抗ウイルス薬投与を検討する。

 

4.抗ウイルス薬の選択

本指針では現時点で日本で入手可能性や有害事象等の観点により以下の薬剤を治療薬として提示する。

<ロピナビル・リトナビル>

コロナウイルスに関する明確な作用機序は明らかにされていないが、MERSへの有効性が示されており、COVID-19に対してもバーチャルスクリーニングで有効である可能性が示されている。

投与方法

1.ロピナビル・リトナビル錠 400㎎/100㎎ 経口 12時間おき、10日程度

2.ロピナビル・リトナビル内用液 400㎎/100㎎ 1回5ml 経口12時間おき、10程度

*上記は抗HIV薬としての承認用量

国内での使用実績

2020年2月21日までに国立国際医療研究センターで8例症例あり。

投与時の注意点

1.ロピナビル・リトナビルの有効性に関し、適切な重症度や投与開始のタイミングに関しては不明である。

2.使用開始前にはHIV感染の有無を確認し、陽性の場合には対応について専門家に相談する

3.リトナビルによる薬剤相互作用があるため、併用薬に注意する。

4.錠剤の内服困難者に内用液を使用する場合、アルコール過敏がないか確認する。

 

 

<ファビピラビル>

効能効果を「新型または再興型インフルエンザウイルス感染症(但し、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効または効果不十分なものに限る)」に限定して、2014年3月に厚生労働省の承認を受けている。

国内での使用実績

2020年2月21日までに本錠のCOVID-19への使用実績はない。

投与方法

1.3600㎎(1800㎎BID)(Day1)+1600㎎(800㎎BID)(Day2以降)、最長14日間投与

投与時の注意点

1.ファビピラビルの有効性に関し、適切な重症度や投与開始のタイミングに関しては不明である。

2.以下の薬剤に関しては、薬物相互作用の可能性があることから注意して使用する。

①ピラジナミド ②レパグリニド ③テオフィリン ④ファムシクロビル 

⑤スリンダク

3.患者の状態によっては経口投与が極めて困難な場合も想定される。その場合は55℃に加温した水を加えて試験薬懸濁液を調整する(簡易懸濁法)。被験者には経鼻胃管を挿入し、経鼻胃管が胃の中に入っていることを胸部X線検査で確認した後、ピストンを用いて懸濁液をゆっくりと注入する。その後、5mlの水で経鼻胃管を洗浄する。

4.動物実験においては、本剤は初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦又は妊娠している可能性がある婦人には投与しないこと。

5.妊娠する可能性のある婦人に投与する場合には、投与開始前に妊娠検査を行い、陰性ることを確認した上で、投与を開始すること。また、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了7日間はパートナーと共に極めて有効な避妊法の実施を徹底するよう指導すること。なお、本剤の投与期間中に妊娠が疑われる場合には、直ちに投与を中止し、医師等に連絡するよう患者を指導すること。

6.本剤は精液中へ移行することから、男性患者に投与する際は、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了7日間まで、性交渉を行う場合は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)するよう指導すること。また、この期間中は妊婦との性交渉を行わせないこと。

7.治療開始に先立ち、患者又はその家族等に有効性及び危険性(胎児への暴露の危険性を含む)を十分に文書にて説明し、文書で同意を得てから投与を開始すること。

8.本剤の投与にあたっては、本剤の必要性を慎重に検討すること。

 

5.COVID-19に対する他の抗ウイルス薬

COVID-19に対する治療に使用できる可能性がある抗ウイルス薬には、レムデシビル、インターフェロン、クロロキシンなどがあるが、それらの効果や併用効果に関しては今後の知見が待たれる。

 

早く治療薬でできることに期待ですね。