患者さんの高齢化
80代が普通になりつつある。70代だとに少し若い、60代だと若い!と感じてしまう今日この頃。
でも、最近90代で治療する患者さんが増えている…。
「せん妄」の理解と対応が大切
せん妄とは
急性に発症する軽度または中等度の意識障害に、幻覚・妄想・錯覚などの精神症状、興奮などが加わった状態
せん妄の診断基準(DSM-5)
1.注意・意識の障害、ボーっとしていて、周囲の状況をよく分かっていない
2.変動性:短期間で出現。1日の中でも症状のむらがある(日内変動)。夜間に悪化
3.認知・近くの異常:記憶障害、見当識障害、幻覚、妄想・神経認知障害の進行では
説明困難。
4.原因となる薬物、または医学的疾患が存在する。
せん妄の疫学
1.せん妄の有病率
・入院患者の約10~30%
・高齢入院患者の約10~40%
2.術後患者では、約50%にせん妄発症リスク
3.ICU管理を要する重症患者は、約80%にせん妄を合併
4.終末期がん患者では、約80%にせん妄
せん妄の症状と分類
・過活動型せん妄
興奮・錯乱・易刺激性・衝動行動・夜間徘徊など交感神経興奮の症状を伴うことが
多い
・低活動型せん妄
無表情・無気力・記銘力低下・動作緩慢などの症状を伴うことが多い
・混合型
過活動型と低活動型の両方の症状が出現
せん妄の誘発因子
薬剤
・オピオイド、トラマドール
*ベルソムラ、ロゼレム以外すべて
・抗ヒスタミン薬(アタラックスPなど)
・抗コリン薬
全身症状
感染症、膠原病、悪性新生物、脳血管障害、心不全、肝不全、呼吸不全、腎不全、低血糖、外科手術、外傷、電解質異常(高Ca、低Na)など
せん妄の促進因子
環境変化
身体抑制
不快な症状(疼痛、尿閉、宿便、発熱、口渇など)
せん妄の対処法
環境介入
・照明の調整(昼夜のメリハリをつける、夜間は薄明り)
・日付や時間の手がかり(カレンダーや時計の利用)
・眼鏡、補聴器に使用
・親しみやすい環境を整える(家族の面会、写真など)
・オリエンテーションを繰り返しつける
安全確保
・障害物、危険物の除去
・離床センサーの設置
・点滴時間の工夫
せん妄に対する薬物療法
◎内服できる→興奮あり→①抗精神病薬
②気分安定薬の併用
→興奮なし→抗うつ薬
◎内服できない→①セレネース点滴投与
②やむをえず鎮静(ミタゾラム、サイレース等)
せん妄治療に用いられる代表的な薬剤
・分類:抗精神病薬
・投与経路:静脈、筋肉、皮下、錠剤
・錐体外路症状:高い
・その他:鎮静作用は穏やか。錐体外路症状に注意だが、静注使用では副作用発現は
少ない
・ポイント:鎮静必要な場合はロヒプノールの併用するが、呼吸抑制に注意
リスパダール(一般名:リスペリドン)
・分類:抗精神病薬
・投与経路:経口(細粒、液剤)
・錐体外路症状:低い(容量に相関)
・主な副作用:血圧低下、嚥下機能低下
・その他:鎮静作用は穏やか。腎機能障害時は減量
・ポイント:内用液は効果発現が速やか
セロクエル(一般名:クエチアピン)
・分類:抗精神病薬
・投与経路:経口(錠剤)
・錐体外路症状:非常に低い
・主な副作用:過鎮静、血糖異常
・その他:錐体外路症状の出現少ない。パーキンソン病のせん妄に有効。
糖尿病には禁忌
・ポイント:適度な鎮静効果で半減期も短く、使いやすい。
・分類:うつ病薬
・投与経路:経口(錠剤)
・錐体外路症状:ない
・主な副作用:過鎮静、持続性勃起
・その他:抗うつ<鎮静効果
立ち眩み、めまいに注意
興奮の目立たないせん妄に対する第一選択
・ポイント:せん妄ハイリスク患者の不眠に有効