災害看護⑤ トリアージ続き(2)

トリアージ記事続き

 

一次トリアージ:START法

       (Simple Triage Rapid Treatment)

1.単純に生理学的指標(呼吸・循環・意識)で重症度を区分する

2.主観的な判断が入らない

3.特別な器具がなくても行える

4.医療従事者であれ、誰でもできる

5.その結果に共通性がありとりあえずの結果に個人差がない

 *30秒程度で迅速に評価する

 

アルゴリズムあり

 

歩行できる?できない?

①「歩けますか?」と問う

 独歩で歩ける人はここで判定が終了  

 歩けない人は次のアルゴリズムへ進む

*災害現場などは大勢に呼びかけることにより、一気に歩ける集団を形成することができる

 

呼吸の評価

呼吸数の測定は1分間の呼吸数を計測すべき、しかし、迅速性を求められる場合は1分間の計測は行わない

①気道の開通を確認

 ・発声ができる=気道が開通している

 ・舌根沈下等により気道閉塞⇒用手的気道確保で呼吸の有無を観察

  *気道解放にて呼吸なし 黒

  *気道解放にて呼吸あり 

②6秒間の呼吸数×10

  *9回/分以下、30回/分以上 

 

循環の評価

橈骨動脈蝕知の有無またはCRT測定

CRT測定とは…毛細血管再充血時間(capillary refill time)

<方法>

 指の爪を5秒程度圧迫して解除する

  →圧迫を解除すると爪床血流の再灌流により色調が元に戻る

 この時間が2秒以下なら正常

 ただし、爪の損傷、爪の疾患、爪の装飾や光量不足などの条件では判定が難しい

 *橈骨動脈蝕知せず、あるいはCRT>2秒なら 

 

意識の評価

簡単な指示・命令に従うか

<注意点>

 運動麻痺・視覚や聴覚障害などでは正しい評価が得られない可能性あり

 必ず複数の行為を指示して判断することが重要

 *従命反応なし 

  従命反応あり 

 

◎一次トリアージにおける緊急処置は気道確保圧迫止血のみ

 

 

二次トリアージ:PAT法

生理学的解剖学的評価:Physiological and Anatomical Triage)

①第1段階で生理学的評価

②第2段階で全身の観察による解剖学的評価

  ⇒①②で該当する異常があれば緊急治療群 

③必要に応じ、第3段階で受傷機転による評価

④必要に応じ、災害弱者に配慮

⑤可能な限り、迅速に行う(1~2分を目標)

 

第1段階:生理学的評価

意識:JCS:2桁以上

呼吸:9回/分以下、30回/分以上

脈拍:120回/分以上、50回/分未満

血圧:収縮期90mmHg未満または200mmHg以上

SpO2:90%未満

その他:ショック症状

体温:35℃以下

 

第2段階:解剖学的評価

解放性頭蓋骨陥没骨折

外頸動脈の著しい怒張

頚部または胸部の皮下気腫

胸郭動揺、フレイルチェスト

開放性気胸

腹部膨隆、腹壁緊張

骨盤骨折

両側大腿骨骨折

四肢の切断

四肢麻痺

穿通性外傷

デグローピング損傷

15%以上の熱傷、顔面気道熱傷の合併

 

◎みて・聞いて・触れる

①頭 ②顔 ③首:気管 ④デコルテ ⑤後頚部 ⑥胸 ⑦腹 ⑧骨盤 ⑨大腿

⑩下腿 ⑪足先 ⑫上肢 ⑬手先

 

第3段階:受傷機転による対応

体幹部の挟圧

1肢以上の挟圧(4時間以上)

爆発

高所墜落

異常温度環境

汚染

有毒ガス発生

*特に第3段階緊急の受傷機転で重症の可能性あれば一見軽症のようであっても非緊急治療群もしくは緊急治療群

 

第4段階:災害弱者の扱い

小児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある傷病者、旅行者(外国人)

 *必要に応じて非緊急治療群とする